日曜の夜、明日やる実験のことを考えただけで気持ちが沈む。
月曜になれば、また細胞を継代して、サンプルを回収して、解析して、結果が出なければ条件を変えてやり直す。週の後半にはミーティングがあって、進捗を説明しなければならない。
金曜の夕方には「今週も何とか終わった」と少しほっとするのに、日曜になるともう次の一週間が始まる。
研究職を辞めたい。
最近、そんな言葉が頭に浮かぶようになった。
でも、本当に辞めようとすると、今度は怖くなる。
研究が嫌いになったのだろうか。今の職場が嫌なだけなのだろうか。それとも、ただ疲れているだけなのだろうか。
辞めたいほどしんどいのに、「では転職します」とは言い切れない。
この状態が続くこと自体が、かなり苦しいと思います。
「もう嫌だ」と思った翌日に、少し面白いデータが出てしまう
研究職を辞めたいと思っているのに、研究が完全に嫌いになったわけではない。
ここが、研究者のキャリアを余計に難しくすることがあります。
何週間もうまくいかなかった実験から、思っていなかった結果が出る。論文を読んでいて「これ、自分の系でも試せるかもしれない」と思う。誰も答えを知らないことを、自分で少しずつ確かめていく瞬間は、今でも面白い。
そんな日があると、「やっぱり私は研究が好きなのかもしれない」と思います。
ところが数日後には、また同じところでつまずく。ミーティングで思うように説明できず、帰り道には「もう辞めたい」と思っている。
好きなのか、嫌いなのか、自分でも分からなくなる。
でも、人は何年も続けてきた仕事に対して、好きか嫌いかのどちらか一つだけを感じるわけではありません。
研究は好きだけれど、この働き方はもうしんどい。
研究テーマには興味があるけれど、今の環境では続けたくない。
面白い瞬間はあるけれど、その瞬間のために残りの時間を耐え続けることに疲れてしまった。
そういうこともあります。
🌿 Marinの独り言
「研究が好きなら続ける、嫌いなら辞める」で決められたら、たぶんこんなに悩まないんですよね。好きだったものだからこそ、「もう続けられないかもしれない」と認める方が苦しいこともあります。
研究室に行くだけで疲れるようになる
研究職がつらくなるとき、必ずしも大きな事件が起きているとは限りません。
毎週のミーティングが少しずつ怖くなったり、上司やPIからのメールを見るだけで身構えたり、ラボにいる人の進捗が耳に入るだけで自分と比較したりする。
一つひとつなら耐えられることでも、それが何か月も積み重なると、研究室にいるだけで消耗するようになることがあります。
以前なら気にしなかった言葉にも傷つく。
誰かの成果を聞くと、自分だけ止まっているように感じる。
「最近どう?」と聞かれることさえ嫌になる。
それでも表面上は普通に仕事をしているので、周りからはそこまで追い詰められているようには見えないこともあります。
自分自身も、「もっと大変な人はいる」「このくらいで辞めたいと思うなんて甘いのでは」と考えてしまう。
そうして、つらいことそのものより、「こんなことでつらいと思っている自分」を責める時間が増えていきます。
研究がうまくいかないことがきっかけで、自分自身の能力まで疑い始めているなら、少し違う苦しさが混ざっていることもあります。
研究がうまくいかない。「私、研究者に向いてないのかも」と自信を失ったときに
辞めたいのに、辞める理由をうまく説明できない
転職を考えると、「なぜ辞めたいのですか」と聞かれることになります。
その質問を想像しただけで、少し困ってしまう人もいます。
仕事内容が明確に嫌なわけではない。人間関係が最悪というほどでもない。会社や研究室に決定的な問題があるとも言い切れない。
ただ、もうしんどい。
でも「しんどい」だけでは、退職するには理由として弱い気がする。
そう思って、もっと立派な理由を探し始めることがあります。
キャリアアップのため。新しい挑戦がしたいから。自分の専門性を違う形で活かしたいから。
もちろん、それが本当ならいいと思います。
でも、まだそこまできれいな言葉になっていない時期もあります。
毎日少しずつ削られていて、もうこの状態を何年も続けたくない。
最初にあるのは、それだけかもしれません。
私は、それを無理に格好いいキャリアストーリーにしなくてもいいと思っています。
辞めるかどうかを決めることと、辞めたい気持ちを説明できることは、必ずしも同時には起こりません。
「もう無理」と思うほど疲れていると、研究そのものまで嫌いに見える
これは、研究を辞めるかどうかを考えるときに、とてもややこしいところです。
余裕がなくなると、自分が何を好きだったのかまで分からなくなることがあります。
面白かったはずの論文を読む気にならない。学会にも行きたくない。新しいデータを見ても何も感じない。
そんな状態になると、「やっぱり私は研究そのものが嫌いになったんだ」と思います。
でも、好きだった映画でも、疲れ切っている日に見れば楽しめないことがあります。
研究も同じで、今何も感じないことだけを材料にして、「私は研究が嫌いになった」と決めるには、少し早い場合があります。
一方で、「今は疲れているだけ」と思い続けて、何年も同じ状態に耐え続ける必要があるとも思いません。
ここが難しい。
だから、私は「本当に研究が好きかどうか」を無理に今すぐ判定しようとしなくていいと思っています。
☕ ちょっと一服
一番疲れている日に、自分の人生について一番大きな決断をしようとすると、どちらを選んでも怖くなります。「辞めたい」という気持ちを無視しないことと、今日すぐ退職を決めることは、同じではありません。
休んだらまた頑張れるのか、それとも戻りたくないのか
連休になると、少し元気になることがあります。
研究室へ行かなくていい。メールも見なくていい。次のミーティングのことも考えなくていい。
数日離れるだけで、「少し休めば、またやれるかもしれない」と思う。
ところが、休みの終わりが近づくと、また気持ちが沈んでくる。
月曜日の朝を想像しただけで、休みの間に戻ってきたはずの元気がなくなっていく。
この感覚が何度も続くと、「私は休みたいのか、辞めたいのか」さえ分からなくなることがあります。
少し休めば戻れる人もいます。
環境を変えるだけで、また研究を面白いと思える人もいます。
研究職そのものから離れて初めて、自分がどれほど無理をしていたかに気づく人もいます。
どれが正しいかは、外からは簡単には分かりません。
だから「つらいなら辞めればいい」とも、「今までやってきたんだからもう少し頑張ればいい」とも、私は簡単には言いたくありません。
どちらも、本人の中にいるときにはそんなに単純ではないからです。
「ここまでやったのに」が、辞めることをもっと難しくする
本当はもう離れたいのに、「でも博士まで取ったし」「何年も研究してきたし」と思うと、辞める決心がつかなくなることがあります。
研究者になるまでには時間がかかります。大学院へ進み、長い時間をかけて専門を身につけ、ようやく今の場所まで来た。
だから研究を辞めることが、単に今の仕事を辞めるだけではなく、ここまでの自分を否定するように感じることがあります。
ただ、この気持ちは「研究職を辞めたい」という苦しさとは少し別のテーマです。
もし一番引っかかっているのが、「辞めたら今までの努力が無駄になる」「ここで離れたら負けた気がする」という感覚なら、こちらの記事で詳しく書いています。
研究職を辞めたら負け?「ここまで頑張ったのに」と思ってしまう人へ
この記事では、そこを無理に解決しようとはしません。
今ここで扱いたいのは、「もうしんどい」という感覚そのものです。
本当は辞めたいほどではなく、「外も見てみたい」だけなら
一方で、この記事を読みながら「私はここまで追い詰められてはいないな」と思った人もいるかもしれません。
今の仕事は嫌いではない。普通に働けているし、研究もそれなりに面白い。それでも、なぜか転職サイトを何度も開いてしまう。
その場合は、「研究職を辞めたい」というより、今とは違う人生の可能性が気になっているのかもしれません。
その感覚は、こちらの記事で掘り下げています。
研究職から転職したい。でも「本当に辞めたいの?」と聞かれると分からない
同じ「転職が気になる」でも、もうこの場所から離れたい人と、今の場所を失いたくないのに外も気になる人では、心の中で起きていることがかなり違います。
研究職を辞めたいのに、誰にも言えない
研究職を辞めたいと思っても、それを研究室の人にはなかなか言えません。
同僚に話せば、「もう辞めるつもりなんだ」と見られそうで怖い。上司やPIにはもっと言いにくい。研究をしていない友人や家族に話すと、「そんなにつらいなら辞めれば?」と返ってくることもあります。
その言葉が間違っているわけではありません。
でも、そう簡単には決められないから苦しい。
そこで結局、一人で考えることになります。
研究を辞めたい。でも研究を捨てるのも怖い。転職したい。でも次に何をするのか分からない。このまま続けるのもしんどいけれど、辞めて後悔するのも怖い。
考えれば考えるほど、どちらの選択にも怖い理由が見つかる。
すると最後には、「私は結局どうしたいんだろう」と自分の気持ちまで分からなくなることがあります。
そんな状態で、きれいな結論を出してから誰かに相談する必要はないと思っています。
むしろ、「もうしんどい。でも本当に辞めたいのかは分からない」というところから話していい。
🌿 Marinの独り言
キャリア相談というと、「次に何をしたいのか決めてから行く場所」のように思われがちです。でも、本当に苦しいときって、そもそも何を話せばいいのかすら分からないことがあります。私は、その状態からでもいいと思っています。
まだ相談するほどではないけれど、研究やこれからのキャリアについて少しずつ情報を受け取りたい方には、Marin Career Labの公式LINEがあります。
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一方で、「もう一人で考え続けること自体に疲れた」「研究室の人には言えないことを、一度誰かに話してみたい」と感じているなら、Marinではココナラで単発相談を受けています。
研究を辞めるか決まっていなくても、Marinに一度話してみる
転職を勧めるための相談ではありません。
話した結果、「もう少し研究を続けたい」と思うかもしれないし、「やっぱり環境を変えたい」と感じるかもしれない。研究とは違うキャリアが気になってくるかもしれません。
今は、その答えがなくても大丈夫です。
もう少し時間をかけて、仕事だけでなくこの先のキャリア全体を考えていきたい方には、継続的な相談も受けています。
「研究職を辞めたい」と思うほどしんどくなったとき、その気持ちを「甘え」「逃げ」と決めつけなくてもいい。
でも同時に、その苦しさだけで、今までの自分やこれからの人生を全部決めなくてもいいと思っています。
辞めたい。
でも、辞めるのも怖い。
その間にいる時間は、とても不安定です。
だからこそ、一人だけで答えまで出そうとしなくてもいい。
まだ言葉になっていないところから、話してみてもいいと思っています。
ABOUT MARIN
Marin|PhD(医科学)・Career Mentor
PhD(医科学)取得後、製薬企業での創薬研究、Harvard Medical Schoolでの研究を経験。現在もライフサイエンス領域で仕事をしています。
Marin Career Labでは、博士号取得後のキャリア、研究職からの転職、30代のキャリア、若手研究者の進路や学振などについて発信しています。



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