研究職のキャリアに迷ったら|「このままでいい?」と思ったときに

Career & Life

転職サイトを開いて、研究職の求人を何件か見る。

気になる求人はある。でも、応募ボタンを押すほどではなくて、そのまま閉じる。

数日後、また同じサイトを開いている。

今の研究が嫌いなわけではない。職場に耐えられないほどの不満があるわけでもない。

それなのに、ときどき「このままでいいのかな」と思う。

研究を続けている自分も想像できるし、違う仕事をしている自分にも少し興味がある。もう少し今の場所で頑張ってみたい気持ちもある一方で、この働き方をこの先も続けることには引っかかりがある。

こういうとき、困るのは「どちらが本音なのか」が分からないことです。

でも、たぶん両方とも本音なんですよね。

研究者のキャリアが決めにくいのは、転職先を知らないからだけではありません。

研究を続けるかどうかを考え始めると、これまで積み上げてきた専門性や、これからの生活、家族、収入、働き方、それから「研究者である自分」をどう考えるのかまで、一緒に動き始めることがあります。

だから、「転職するか、しないか」だけを考えていても、なかなか答えが出ない。

この記事では、研究職をこのまま続けるか迷ったときに、その迷いの中で何が起きているのかを少しずつほどいていきます。

☕ 博士の転職や、その先の進路をもう少し広く見たい方へ

「研究職を続けるか」「企業へ行くか」だけではなく、博士の専門性をこれからどこで使うのか。研究職以外のキャリアも含めて、博士の転職・キャリアチェンジについてこちらにまとめています。

博士の転職・キャリアチェンジ|研究職以外も含めて進路を考える

なぜ研究者のキャリアは決めにくいのか

キャリアについて悩んでいるとき、必ずしも「転職したい」「海外へ行きたい」「研究職を辞めたい」のように、次にしたいことがはっきりしているとは限りません。

むしろ、本当に迷っているときほど、そんなにきれいには説明できないものだと思います。

今の仕事がものすごく嫌なわけではない。研究を辞めると決めたわけでもない。転職サイトを見ることはあるけれど、今すぐ応募したい会社があるわけでもない。

ただ、ときどき「このままでいいのかな」と思う。

研究者のキャリアには、少し独特なところがあります。

博士課程に入り、一つのテーマを何年も追いかけていると、研究は単なる仕事ではなくなっていきます。

何を研究しているのかを聞かれることにも慣れますし、所属する研究室や専門分野を通して人とつながることも増えます。「私は何をしている人なのか」と聞かれたとき、研究内容がそのまま自分の説明になることもあります。

だから、研究職を離れるかどうかを考え始めると、単に勤務先を変える話では済まなくなることがあります。

これまで積み上げてきたものをどうするのか。

博士まで取ったのに、違う仕事へ行っていいのか。

もう少し続けたら何か変わるのではないか。

ここで離れたら、あとで後悔しないだろうか。

そんなことまで一緒に考え始めるので、簡単には決められません。

🌿 Marinの独り言

研究では、分からないことがあれば追加の実験をして、少しずつ情報を増やしていきます。

でもキャリアは、すべてのデータが揃ってから判断することができません。

未来のことなので、最後まで分からない部分が残る。その状態で決めなければいけないこと自体が、研究者にとっては案外しんどいのかもしれません。

「転職したい」だけでは説明できない迷いがある

友人や同期の近況を聞いた日に、急に自分のキャリアが気になることがあります。

同じ頃に博士を取った人が企業へ移った。海外へ行った。昇進した。研究を離れて違う仕事を始めた。

自分は自分だと思っていても、ふと比べてしまう。

30代に入ると、そこに仕事以外のことも入ってきます。

結婚や子どものことを考えるかもしれません。住む場所をどうするか、家族との時間をどうするか、収入や雇用の安定をどこまで重視するかも気になってくる。

すると、「転職したいのか?」という一つの質問では、うまく整理できなくなります。

以前、キャリアについて話した方の中にも、最初は「転職した方がいいのか迷っています」と話していた方がいました。

個人が特定されないよう内容は一部再構成していますが、その方は今の研究が嫌いなわけでも、職場に大きな不満があるわけでもありませんでした。

それでも、気づくと転職サイトを開いている。

興味のある仕事もある。でも実際に応募しようとすると、「本当に今の仕事を辞めたいんだろうか」と分からなくなる。

話しているうちに、その方が何度か、

「この生活を、この先もずっと続けるのかな」

と言いました。

気になってもう少し話してみると、仕事そのものとは少し違う話が出てきました。

今の研究は嫌いではない。でも、仕事を中心に住む場所や毎日の時間の使い方が決まっていくことに、少しずつ違和感を持つようになっていた。

これからの生活や家族のことも考えたい。

でも、博士まで取って研究を続けてきた自分が、ここで違う道を選んでいいのかも分からない。

その方が迷っていたのは、「今の会社を辞めるかどうか」だけではありませんでした。

これまで大切にしてきた研究と、これから大切にしたい生活を、どう一緒に考えるのか。

そこが一番引っかかっていたんです。

研究・生活・アイデンティティは、きれいに分けられない

研究者や博士として長く過ごしてきた人にとって、キャリアだけを人生から切り離して考えるのは、なかなか難しいことがあります。

仕事ではもっと挑戦したい。でも、仕事だけで毎日が終わる生活をこの先も続けたいわけではない。

海外で働いてみたい。でも、大切な人と離れることを考えると迷う。

研究は好き。でも、結婚や子どものことだって大切にしたい。

研究室を離れてみたい。でも、「研究者ではない自分」をまだうまく想像できない。

こういう気持ちは、どれか一つを選べば消えるものでもありません。

特に博士まで研究してきた人にとっては、「何を仕事にするか」と「自分は何者なのか」が近くなっていることがあります。

だから研究職を離れることが、単なる職種変更ではなく、「ここまでやってきた自分を否定すること」のように感じられてしまう。

でも私は、研究者であることと、研究職に就いていることは、完全に同じではないと思っています。

研究室を離れたからといって、それまで身につけてきた考え方までなくなるわけではありません。

問いを立てること。分からないことを調べること。仮説をつくって、違っていたら修正すること。複雑な情報を読みながら、自分なりの判断をすること。

そういうものは、研究職を離れても残ります。

研究が好きなのに、研究職を続けることには迷いがある。その感覚については、こちらの記事でも書いています。

研究が好きなのに離れる?研究職と「好き」をどう考えるか

そして、研究の中では当たり前すぎて自分では気づきにくい強みについては、こちらにまとめています。

研究者の強みをキャリアでどう考える?

言葉にすることで、初めて見えるものがある

一人でキャリアについて考えていると、同じ質問を何度も頭の中で繰り返すことがあります。

転職した方がいいのか。

研究を続けた方がいいのか。

もう少し頑張った方がいいのか。

違う道へ行ったら後悔するのか。

でも、問いそのものが少し違っていたら、いくら考えても答えは出ません。

「転職したい」と思っていたけれど、よく考えてみると、変えたかったのは仕事そのものではなく働き方だった。

「研究を辞めたい」と思っていたけれど、研究が嫌なのではなく、任期や将来の見えなさに疲れていた。

仕事について悩んでいたはずなのに、本当に気になっていたのは、これからどんな生活をしたいのかということだった。

こういうことは、頭の中だけで考えていると意外と見えません。

紙に書いてみたときに気づく人もいれば、人に説明しようとした瞬間に気づく人もいます。

自分の話を自分の耳で聞いて、初めて、

「私、同じことを何度も言っているな」

と気づくこともあります。

☕ Marinのひとこと

キャリアについて迷ったとき、すぐに「次の職種」を決めなくてもいいと思っています。

その前に、自分は今の何に引っかかっているのかが分かるだけで、見える選択肢が変わることがあります。

だから、ここで大切なのは「正しい答えを見つけること」よりも、自分が何に反応しているのかを少しずつ言葉にしていくことなのだと思います。

途中で考えが変わってもいい。

昨日は研究を続けたいと思っていたのに、今日は違う仕事が気になる。それもおかしなことではありません。

人の気持ちは、実験条件のように一つに固定できるものではないからです。

その方法の一つとして、人に話すこともある

ここまで書いてきたことは、「キャリアに迷ったら必ず誰かに相談した方がいい」という意味ではありません。

一人で考える時間が必要な人もいますし、家族や友人に話すことで整理できる人もいます。

少し時間を置いたら、自然と答えが見えてくることもあります。

ただ、一人で考えていると何度も同じところへ戻ってしまうときには、誰かに話すことが役に立つ場合があります。

そのときも、相談内容をきれいにまとめておく必要はないと思っています。

「転職したいのか分からない」

「研究を辞めたいわけではないけれど、このままも違う気がする」

「そもそも何に悩んでいるのか分からない」

そのくらいから話し始めてもいい。

話しているうちに、仕事の話から家族の話になるかもしれません。海外の話になるかもしれないし、研究そのものの話に戻るかもしれません。

それは脱線ではなく、その人の中では全部つながっているのだと思います。

帰るときに、すべての答えが決まっている必要もありません。

来たときより少しだけ、

「私がずっと引っかかっていたのは、これだったのかもしれない」

と分かれば、そこから次を考えやすくなることがあります。

もし一人で考えることに少し疲れたら、Marinでも1対1の相談を受けています。

まだ整理できていないところからMarinに話してみる|Coconala

継続してキャリアについて一緒に考えていきたい方は、MENTAでも相談を受けています。

継続キャリア相談|MENTA

まだ相談するほどではないけれど、研究者のキャリアを考えている方へ

今すぐ転職するわけではない。

でも、研究者として働く世界がこれからどう変わるのかは知っておきたい。

そんな段階でもいいと思っています。

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Threadsでは、「このままでいいのかな」「研究を離れたら何者になるんだろう」といった研究者の日々の迷いや、キャリアについて考えたことを中心に書いています。

Instagramでは、海外のPhDキャリア、AI、研究・産業・政策の変化など、普段の研究生活だけでは入ってきにくい情報を取り上げています。「そんな働き方もあるんだ」と、自分の世界が少し広がるような情報を届けていきたいと思っています。

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ABOUT MARIN

Marin|PhD(医科学)・Career Mentor

PhD(医科学)取得後、製薬企業での創薬研究、Harvard Medical Schoolでの研究を経験。現在もライフサイエンス領域で仕事をしています。

Marin Career Labでは、博士号取得後のキャリア、研究職からの転職、30代のキャリア、若手研究者の進路や学振などについて発信しています。

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