HarvardのCareer Fairで知った、PhDが企業就職で求められること

アメリカ就活

Harvardで研究していた頃、PhD学生やポスドクを対象としたCareer Fairに参加したことがあります。

会場では、PhD学生やポスドクとIndustryのマッチングやキャリアフォーラムが行われていて、多くの研究者が企業の担当者と話していました。

講演のagendaには、「製薬企業の欲しがる人材とスキルの磨き方」というセッションもありました。

そこで一番印象に残ったのは、

「自分がなぜその職業につきたいのか、自分なりのストーリーを作り、情熱と共に相手にぶつける」

ことが大切だ、という話でした。

当時の私は、研究者が企業へ行くなら、どんな研究をしてきたのか、どんな実験ができるのかといった「専門性」が一番大切なのだと思っていました。

もちろん、それも重要です。

でもCareer Fairで聞いた話は、それだけではありませんでした。

なぜその仕事をしたいのか。

その仕事をするために、これまで何をしてきたのか。

そして、自分はその会社に何を提供できるのか。

研究経歴やスキルを並べるだけではなく、自分のこれまでと、これからやりたい仕事を一本のストーリーとして伝えることが求められていました。

Job Descriptionを読んで、自分に足りないものを見る

企業への就職を考えるとき、まずJob Descriptionを読む。

そこに書かれている仕事内容や応募条件から、その仕事に必要なスキルセットを把握する。

そして、自分に足りない経験があれば、インターンやプロジェクトなどを通じて、そのギャップを埋めていく。

Career Fairでは、そんな考え方が紹介されていました。

学生やポスドクであれば、残りの研究期間の中で必要な経験を取りに行くこともできます。

すでに働いている人なら、今の仕事の中で近い経験を積めないか考えたり、社内のプロジェクトに参加したりすることもできると思います。

大切なのは、求人票を見て、

「これがないから無理」

で終わるのではなく、

「この仕事には何が必要で、自分には何があって、何がまだ足りないのか」

を見ることなのだと思います。

研究室にいると、「何を研究しているか」がその人を説明する大きな要素になります。

でも企業側が見ているのは、その専門分野の名前だけではありません。

その経験を使って、この仕事で何ができるのか。

そこまで伝える必要があります。

☕ 求人票を見るほど、「自分には足りないものばかり」と感じる方へ

博士号も研究経験もあるのに、求人を見ると「自分が応募できる仕事がない」と感じることがあります。

博士の経験と企業の求人票の間で起きるズレについては、こちらの記事で詳しく書いています。

博士の転職は難しい?求人を見るほど「応募できる仕事がない」と感じるときに

「なぜその仕事なのか」を、自分のストーリーとして伝える

もう一つ印象に残ったのが、Cover Letterについての話でした。

ただ、

「この仕事に興味があります」

と書くだけではない。

なぜその職業を目指すようになったのか。

そのために、どんな経験をしてきたのか。

足りないスキルがあったなら、どうやってそのギャップを埋めてきたのか。

それを、自分自身のキャリアのストーリーとして伝える。

Career Fairで繰り返し出てきたのは、経歴をきれいに並べることよりも、

「なぜ自分はこの仕事をしたいのか」

を、自分の言葉で相手に伝えることの大切さでした。

そこには、ある程度の情熱も必要なのだと思います。

自分の人生や研究経験の中で、なぜその仕事に興味を持つようになったのか。

なぜ他の仕事ではなく、その仕事なのか。

そこが伝わると、その人の経歴も単なる履歴ではなく、一つのストーリーとして見えてきます。

私はこの話を聞きながら、学振の推薦書や申請書を書くときにも少し似ているなと思いました。

実績だけを並べるのではなく、

「なぜこの研究をするのか」

が必要になる。

企業への転職でも、

「私はこれをやってきました」

だけではなく、

「だから私は、次にこの仕事をしたい」

までつながっていることが大切なのだと思います。

企業が知りたいのは、「あなたは何を提供できるのか」

セッションの中でもう一つ強調されていたのが、

「企業が一番知りたいのは、あなたが会社に対して何ができるのか、何を提供できるのか」

ということでした。

たとえば、分子生物学的な実験手法を身につけている。

Data Analysisができる。

英語で研究発表をしてきた。

論文を書いた。

プロジェクトを進めてきた。

研究者にとっては、どれも日常の延長にある経験かもしれません。

でも企業側に伝えるときは、

「そのスキルを持っています」

だけでは少し弱い。

そのスキルを使って何をしたのか。

どんな問題に直面して、どう考え、どう解決したのか。

その結果、何につながったのか。

具体的なエピソードと一緒に伝えた方が、その人が実際に何をできるのかを想像してもらいやすくなります。

研究室に長くいると、自分にとって当たり前になってしまっている経験があります。

でも、その「当たり前」は、研究室の外では意外と当たり前ではありません。

自分が何年もかけて身につけてきたことを、一度研究室の外から見直してみる。

すると、専門分野の名前だけでは見えなかったものが出てくることがあります。

☕ 「自分には研究以外に何ができるんだろう」と思った方へ

専門分野そのものではなく、研究を通して身につけてきたものを見ると、自分では気づいていなかった強みが見えてくることがあります。

自分の強みがわからない研究者へ|研究経験から「転職で使える強み」を見つける方法

Harvardにいる研究者も、キャリアには迷っていた

Career Fairのセッションの中では、現地の学生と話す機会もありました。

そこで少し意外だったのが、Harvardにいる優秀なPhD学生や研究者であっても、キャリアについて普通に悩んでいたことです。

アカデミアへ行くのか。

企業へ行くのか。

企業へ行くとしても、研究を続けるのか。

それとも研究とは違う仕事へ進むのか。

選択肢が多いからこそ、決められないという人もいました。

周りには優秀な人がたくさんいる。当然competitorも多い。

だからこそ、自分が何を持っているのか、自分は何ができるのかを、自分の言葉で話せることが大切なのだと感じました。

Harvardにいるからキャリアに迷わないわけではない。

優秀だから、自分に合う仕事が自然に見つかるわけでもない。

むしろ選択肢が増えるほど、

「できること」

「やりたいこと」

の両方を考えなければならなくなるのだと思います。

研究経験は、そのままでは企業に伝わらないことがある

このCareer Fairを振り返って、今でも一番残っていることがあります。

研究者として積んできた経験は、研究室の外へ出た瞬間に価値がなくなるわけではありません。

博士号も、実験経験も、論文も、その途中で身につけた考え方も消えません。

ただ、

「自分にはこれだけの経験がある」

ことと、

「その経験の価値が相手に伝わる」

ことは別です。

研究者同士なら、研究テーマや使っている技術を聞いただけで、ある程度その人が何をしてきたのか想像できます。

でも、企業では必ずしもそうではありません。

だからこそ、

何を研究してきたのか。

ではなく、

その中で何を考え、何を解決し、自分がどんな役割を担ってきたのか。

そこまで一度言葉にしてみる必要があります。

研究経験を捨てるのではなく、研究室の外でも伝わる言葉に置き換える。

企業へキャリアを広げるときには、その作業が思っている以上に大切なのだと思います。

☕ 「企業に行けるか」より、研究職から離れること自体に迷っている方へ

もし不安なのが求人条件ではなく、「これまで研究者だった自分が、別の仕事へ進んでいいのか」ということなら、こちらの記事の方が近いかもしれません。

研究職から異業種へ転職できる?研究経験を活かせる仕事と考え方

キャリアに迷うこと自体は、能力不足ではない

Career Fairにいた人たちも、次のキャリアについて悩んでいました。

その姿を見て、

「キャリアに迷っていることと、能力がないことは別なんだ」

と思ったことを覚えています。

研究なら、仮説を立てて、実験をして、結果を見て、また次を考えることができます。

でも自分自身のキャリアには、研究のような明確な答えがありません。

どんな仕事なら自分の経験を活かせるのか。

研究を続けたいのか。

企業へ行きたいのか。

違う職種にも興味があるのか。

仕事だけではなく、これからどんな生活をしたいのか。

いろいろなことが一緒になるほど、自分でも何に迷っているのか分からなくなることがあります。

そんなときは、いきなり「正しい転職先」を探さなくてもいいのだと思います。

まず、自分が何を変えたいのか。

何は変えたくないのか。

そこから考えていく方が、次の選択肢が見えやすくなることもあります。

☕ 「転職するかどうか」からまだ決められない方へ

求人を探す前に、「そもそも私は何を変えたいんだろう」と同じところを何度も考えてしまうことがあります。

研究職のキャリアに迷ったら|「このままでいい?」と思ったときに



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